前頭側頭型認知症の場合、同じルートにこだわって歩きまわることがよくあります。この前頭側頭型認知症の人が歩き続けることを周徊といいます。この時、介護職の対応として、本人を呼び止めて行動を制止させたり、説得しようとするのは非常に難しいことです。まずは、利用者の周徊ルートに、危険物がないかを確認することが大事になります。そのうえで、周徊行動に問題や危険が伴うのなら、別の習慣化された常同行動へ切り替えができるかどうかを検討することが重要です。基本的に前頭側頭型認知症をもつ利用者の常同的な行動は、他者はもちろん、本人ですらもその行動をとめることができません。そこで環境による不快な刺激が加わることで、生活のしづらさが複雑化していきます。一つ一つ丁寧に紐解いていく気持ちを忘れずに介護にあたることが大切です。常同へのこだわり、影響の受けやすさという前頭側頭型認知症の特徴をいかにケアに結び付けていくかがポイントになります。
たとえば、周徊行動が問題となっている場合、本人の趣味を活かすなどして、行動パターンを転換することが必要です。繰り返し促し続けることで、周徊するという行動パターンを、新しい行動パターンに転換することが可能です。行動の切り替えが難しい時には、進行方向に掲示物を設置して、いつものルートに視覚的な刺激を与える方法もあります。加えて、長距離の周徊であれば、甘いものを強くほしがるという味覚の変化もこの認知症の特徴ですので、おやつを食べる等、休息のきっかけづくりを促すことも大事です。なお、本人も自分の行動をコントロールできないため、周徊癖のある利用者の疲労骨折に注意が必要です。