認知症のある利用者の介護において、言うことを聞いてくれないなど、介助しようとしても断られるという問題はよく起こります。認知症があると、人や場所が認識できなかったり、理解力や判断力が衰えたりするため、利用者は周囲の状況に戸惑ったり、混乱することがあります。このように戸惑いや混乱など、さまざまな状態が重なり、介護職による介助を断ってしまう利用者は少なくありません。そういう場面で、認知症だから、介護の必要性が理解できていないと捉えて、必要性が理解できれば、介助を受け入れてくれると何度も説得を繰り返してしまう介護職もいるようです。もちろん、それで介助を受け入れてくれる場合もありますが、どちらかというと介助拒否の傾向が強くなりがちです。説明にはわかったと答えても、後で、そんなことは言っていないと断られてしまうこともよくあります。
利用者に介助を断られた場合、介助を受け入れてもらうための手段を考えがちですが、利用者の言動には必ず理由があると考え、その理由を探ることが大事です。その理由は、認知症の原因疾患が引き起こす症状のこともあれば、腹痛など、その日の体調によるもの、真夜中の静まり返った部屋の様子から湧いてきた不安や寂しさなど、さまざまです。いずれの場合も、ほかの職員と共に無限に考えられる理由を探り、それに適したアプローチを検討することが重要になります。断られたという結果だけをチームで共有しても次につながらないため、どこでどんな声をかけたのか、利用者はどんな表情をしていたのかなど、断られた後の利用者とのやりとりなども共有することが大切です。