アルツハイマー型認知症のケア

アルツハイマー型認知症の場合、入所したばかりの利用者が、どこにいるのか場所を認識できずに歩き回って落ち着かないということがあります。アルツハイマー型認知症の利用者は、近時記憶障害や前向健忘により、過去のことよりも、直近で体験したことを忘れやすいため、初めて行った場所では、自分がどこにいるのかわからないという状態に陥ることは多いです。この混乱は、環境に適応するために避けられないもので、多くは不安を持ちながらあがいていくうちに、数日から数週間で誤見当の状態に移行していきます。このタイプの認知症に対するケアとして、こうした知識をいれておくと利用者への不快感を軽減することが可能です。

落ち着かずに歩き回っている利用者を介護職がその場でなんとかしようとして、施設の名前や入所の経緯を丁寧に説明しようとすると、混乱や焦りを増幅させることになるので注意が必要です。そのため、無理に座ってもらおうとせずに、そのまま話を聞きながら見守るという姿勢が大事になります。それでも落ち着きを取り戻さない利用者に対しては、「後で家に送りますよ」と声を掛けることで、一時的に安心することがあるようです。しかし、入所施設の場合、家に帰ることはできませんから、同じ対応を繰り返しているうちに、介護職側が疲弊してしまうことにつながるため注意が必要です。入所直後は難しい時期ではありますが、誤見当の状態に移行するまでの対応だと考え、先を見据えた認知症ケアを行っていくことが重要です。